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内科・呼吸器内科|
とじま内科クリニック
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健康メモ

健康メモ(17)「自律神経を安定させる呼吸法について」参考文献:「自律神経最新1分体操大全」(小林弘幸)

緊張や不安を感じたとき、呼吸は無意識のうちに浅く速くなり、自律神経のバランスが乱れます。こうしたときは、息を「ゆっくり吐く呼吸」がおすすめです。そのやり方を説明します。

①両足を肩幅に開き、両手で三角形を作って、中指の先を丹田(へその下5センチくらい)にあてます。

②背すじを伸ばして胸を張り、鼻からゆっくり、3~4秒かけて、三角形の頂点(中指)に空気を送り込むイメージで息を吸います。

③口をすぼめ、おなかの空気を出し切るように、ゆっくり6〜8秒かけて息を吐きます。

②と③を5回繰り返します。

ゆっくり吐く呼吸

「背伸び深呼吸」も、硬くなった肩甲骨周囲がほぐれて自律神経が整うのでおすすめです。

背伸び深呼吸

両足を肩幅に開き、背すじを伸ばしてまっすぐ立ちます。

②両腕を高く上げ、頭の上で手を重ね、息を吸いながら、かかとを上げて全身を上にしっかり伸ばします。 

③息を吐きながら、手のひらは外側に向けて両腕を横に大きく回すようにして下ろし、最初の姿勢に戻ります。  

②と③を5回繰り返します。


コロナ禍でのストレスやコロナ罹患後の後遺症で自律神経の乱れが起きている人が多くいます。「ゆっくり呼吸」は副交感神経(心身の働きをリラックスさせる自律神経)を高めるのに効果的ですが、「ゆっくり呼吸」をする余裕がないときにおすすめなのが「ため息」です。なるべく長く「ハァー」と吐くとより効果的です。

健康メモ(16)「内臓脂肪を減らすには」 参考文献:「内臓脂肪を最速で落とす」(奥田昌子)

男性に多い「内臓脂肪」(リンゴ型肥満)と女性に多い「皮下脂肪」(洋ナシ型肥満)の違いがわかりますか?

①内臓脂肪が蓄積した体型

おなかを中心に胸や肩など上半身にたっぷり付きます。
脂肪を減らしにくく、血圧、血糖、コレステロールなど複数のリスクを抱えやすいのです。
内臓脂肪はお腹の中で内臓を吊り下げる働きをしている腸間膜に付きます。


②皮下脂肪が蓄積した体型  

主に女性の腰から太ももにかけて付きます。
男性にも皮下脂肪は付きますし、女性も閉経をむかえると内臓脂肪が増えます。
脂質も血圧も血糖も基準値以内で、他に目立った問題がなければ肥満が悪いわけではありません。


 脂肪細胞1個1個の中に中性脂肪の形でエネルギーが蓄えられており、内臓脂肪がたまると腹囲が大きくなります。
これを式で表すと、腹囲1センチ=内臓脂肪1キログラム=7000キロカロリー

 毎日70キロカロリー多く摂取するだけで、100日で腹囲は1センチ増えることになります。
逆に多めによそっていたご飯を普通盛りにするだけで、100日で腹囲は1センチ減るのです。
体の脂肪が減らない人の問題は、脂肪だけでなく炭水化物を摂りすぎていることです。摂りすぎたブドウ糖はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられ、エネルギー源として使われるため、脂肪が消費されにくいのです。

 脂肪がほとんど入っていないのに脂肪を増やす食品として、果物とアルコールがあります。果物の糖分には、ブドウ糖、果糖、ショ糖の三種類があり、果糖は肝臓に吸収されて中性脂肪に変わるうえに、血糖値を高めないので脳に満腹シグナルが送られず、食べ過ぎてしまいます。アルコールにもカロリーがあり、飲みすぎると内臓脂肪が付きます。またアルコールは食欲を高め、内臓脂肪の蓄積を促すホルモンを分泌させます。血液検査で中性脂肪の高い人は、アルコールの飲みすぎ、果物やお菓子の摂りすぎである場合が多いようです。

 中性脂肪を減らし、内臓脂肪を付きにくくする代表的食品は魚です。特に背中の青い魚(ブリ、サバ、サワラ、イワシ、サンマなど)には不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富で、この二つは中性脂肪を減らします。

 そして運動です。息がはずむ程度の運動を30分間、週に5日以上行う、もしくは、1日の歩数をそれまでより3000歩増やす(これは30分の歩行に相当する)ことが推奨されています。体重60キロの人がジョギングなどの有酸素運動を30分間行うと90キロカロリー使います。運動によって消費するエネルギーは、同じ運動をしても体重の重い人ほど多いです。

健康メモ(15)「免疫力を強くするには」 参考文献:「免疫力を強くする」(宮坂昌之)、「免疫力の話」(石原新菜)

 感染症とは、病原体(細菌、ウイルス、真菌など)によってもたらされる病気です。
私たちの体には、病原体の侵入や拡散を防ぐ様々な仕組みがあるため、簡単には感染症にかかりません。
外部から体を守っているのが免疫というシステムです。

 物理的バリアー(皮膚の角質、気道や腸管の粘膜、口の中の唾液など)、バリアーに含まれる殺菌性の物質(化学的バリアー)、白血球が殺菌性物質を放出したり、病原体を食べたりする細胞性バリアーを合わせて「自然免疫機構」といいます。
これは生まれつき体に備わっている免疫機構で、病原体が体に入ってくると最初に働くシステムですが、一度入ってきた病原体を覚えていない(学習効果がない)という特徴があります。

 これに加えて、生後に獲得される「獲得免疫機構」という仕組みがあります。
自然免疫機構を突破した病原体に対して白血球の中でも特にリンパ球が主体となり抗体などを用いることで病原体を排除します。
獲得免疫機構の特徴は、一度出会った病原体を覚えていて、その病原体を選択的にやっつけることができるということです。

 免疫力アップについて考える際難しいのは、免疫力は簡単に測定できないということです。
ですから何が免疫力を強くするのか、簡単には論じられません。科学的に確かな免疫力増強法は「ワクチン接種」です。
それ以外の方法として、血液系やリンパ系の細胞の往来を速やかにすることが重要です。
できればストレスがかからない形で、血流、リンパ流を良くするのがいいのです。

(1)体に休息を与える

 疲れが溜まると免疫力が低下します。無理に運動の時間などを入れていくと、交感神経が働きすぎるため免疫細胞の働きも落ちてきます。
大切なのは、適度な休息をとり、だらだら過ごす時間をとることです。

(2)空腹を感じるまでは食べない

 食事は3食きちんと食べることが推奨されていますが、あまりお腹が空いていないのに「時間になったから」という理由で食事をとることは体にいいことではありません。
免疫細胞である白血球は、満腹状態では活発に働きません。
朝食や昼食の時間が決められている場合は、食べる量を調整して、食べすぎにならないようにします。

(3)40℃のお湯に10分つかる

 免疫力を上げるには、体を温めることが大切です。食事やストレスに注意し、体を冷やさないように気をつけます。
42℃以上の熱すぎるお湯に首までつかっていると、心臓や血管に負担がかかってしまいます。
ぬるめのお湯につかって、リラックスするのが効果的です。炭酸ガス入り入浴剤を使うと血行が促進されます。

(4)7時間寝る

 睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上の人と比べて、風邪をひく確率が4.2倍という報告があります。
睡眠時間が短いと自律神経が乱れ、免疫機能に悪影響が出るのです。
また、睡眠時間は長すぎても、自律神経が乱れて免疫力の低下を招くようです。
成長ホルモンは午後10時から午前2時までの間の睡眠中に最も多く分泌されます。
その時間に眠ることで、傷ついた細胞を修復して、免疫力を高めるとともに、肌や髪を再生すると言われています。

(5)しょうが紅茶を飲む

 しょうがに含まれる辛味成分(ジンゲロール)は末梢の血管を拡張させ、血流をよくします。
すると基礎代謝が上がって体温が上がります。まずカップに紅茶を入れ、おろし金ですりおろしたしょうがを小さじ1~2杯加えます。
黒砂糖かはちみつを入れると味がよくなります。しょうがをすりおろすのが面倒であれば、市販のチューブ入りでも構いません。
しょうが紅茶には、体を温める作用と利尿作用があり、便秘、頭痛、肩こりにも効果があるようです。

健康メモ(14)「氣の呼吸法について」 参考文献:「氣の呼吸法」(藤平光一)、「姿勢と呼吸の整え方」(藤平信一)

健康メモ(14)「氣の呼吸法について」

 あなたは普段、どんな呼吸をしているでしょうか。多くの人は無自覚に呼吸をしているものです。しかし、呼吸には心の状態が表れているので、体調が優れない場合を除き、荒い呼吸、浅い呼吸になっているときは、心の状態が乱れているということです。力みなく息を吐けると、吸うときも自然に力みなく、深く吸えるようになります。感情を直接コントロールすることはできませんが、日ごろから、心地よい呼吸を体に覚えさせておくと、感情が乱れたときに同じ呼吸をすることで、感情に振り回されることがなくなっていきます。

1. 姿勢の確認 

肩を上下して、一番楽に肩を上下できる位置を探します。リラックスしてから手を太ももの上に軽く置きます。体に余分な力が入っておらず、ふわっとしていて安定しています。「胸を張った姿勢」や「猫背の状態」にならないようにします。


2. 息の吐き方

 「あ」と音を発する口の形で、「ハー」と息を吐きます。目の前に息を吐くのではなく、遠くまでまっすぐに届くようにイメージして吐きます。体の中から自然に息が出て行くようにすればよいのです。吐く息は徐々に少なくなり、無限小に静まっていきます。その間、口は閉じずに開けたままにしておきます。無理に吐こうとか、吐き切ろうとせず、自然に任せます。

3. 息の吸い方

 吐く息が十分に静まったら、口を閉じて、今度は鼻先から静かに吸います。たくさん吸おうとしたり、吸う息をコントロールしようとすると、苦しくなってしまいます。吸った息が足先から入って、脚、腰、胸、頭と徐々に満たされるイメージを持つと楽に吸うことができます。静かに吸って、吸う息をそのままに任せておくと、吸う息も無限小に静まっていきます。吸う息が十分に静まったら口を開けて吐き始めます。

4. 出づるに任せ、入るに任す

 吐く息と吸う息を繰り返す段階になると、自然に「任せる」ということを忘れて、意識して息を止めてしまうことがあります。自分で呼吸をコントロールしようとすると、体に余分な力が入ってしまい、呼吸が苦しくなって長続きしません。苦しくなる時は、たいていは姿勢が乱れているので、いったんやめて姿勢を確認します。通常の呼吸と同様に、呼吸していることを忘れてしまうようであれば、言うことはありません。

5. まずは一日15分から

 「氣の呼吸法」をまずは一日15分くらいから初めてみましょう。そして少なくとも二週間は続けてください。深い呼吸が身についてくると、日常の呼吸も深まる実感が得られます。自分の気持ちの持ち方で、いくらでも「氣の呼吸法」をする時間は作れます。

健康メモ(13)「がんの予防について(2)」(参考文献「がん予防の教科書」浅香正博著)

◎肺がん
 肺がんはわが国で死亡者数が最も多いがんであり、喫煙が大きな原因であることは明白です。
タバコの煙には多くの発がん物質が含まれており、肺がんの相対リスクは非喫煙者に比べて男性で4.4倍、女性では2.8倍(日本人の疫学調査)です。
自分でタバコを吸わなくても、受動喫煙で肺がんリスクが上昇することも証明されています。生活習慣由来のがんの中で、原因がこれほどはっきりしているのは肺がん以外にありません。

肺がんの年齢調整死亡率は1995年をピークにしてゆっくりと減少しています。喫煙開始から肺がん発症まで20年以上かかるので、喫煙率の減少の効果が出てきているものと思われます。

 日本では40歳以上の人に胸部X線検査で肺がん検診を行っていますが、近年X線よりCT検査の方が優れていることが明らかになってきています。

◎大腸がん
 大腸がんになりやすいのは65歳以上の高齢者で、肥満傾向があって運動不足、食生活が肉食中心で野菜や果物をあまり摂らない、大腸にポリープがある、家族歴、大量のアルコール摂取や喫煙者と言われています。日本人を対象とした検討によると、大腸がんのリスクを下げる要因で確実なものは運動、リスクを上昇させる要因で確実なのは基準以上のアルコール摂取、リスク上昇の可能性ありが動物性脂肪と喫煙でした。ただ、運動不足は大腸がんの中でも結腸がんと強い関連性がありますが、直腸がんとはあまり関連性がないようです。

 大腸がん検診は便潜血検査で、陽性の場合は内視鏡検査を受けてください。便潜血検査が陰性でも大腸がんであるケースが稀にあるため、便潜血陰性でも5年に1回くらい内視鏡検査を推奨します。

◎膵臓がん
 膵臓がんは1980年代になってから死亡者数が増加しており、2012年には肝臓がんを抜きわが国の死亡原因の四位になりました。膵臓がんの発生を高めるリスクとして、糖尿病、肥満、飲酒や喫煙などが挙げられます。また、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)の既往を持つ人や、家族歴のある人です。膵臓がんの診断は難しく有効と判断されている検診はありません。腹部超音波検査、CT、MRIなどで診断しますが、近年MRCP(MRIを用いて胆管、膵管を描出)ができるようになったので、リスクの高い人に推奨できます。

◎食道がん
 我が国の食道がんの大半は扁平上皮がんで、その原因は喫煙とアルコールにほぼ限定できます。禁煙と飲酒量の適正化でわが国の食道がんの約90%は予防可能です。飲酒量が多くないにもかかわらず食道がんになった人は、アセトアルデヒド脱水素酵素にヘテロタイプの変異のある方(酒を飲むとすぐ顔が赤くなる人)です。そのような方は飲酒しないように努めてください。

◎乳がん
 2020年の乳がんによる死亡者数は女性の場合、大腸、肺、膵臓についで四位でした。我が国の乳がん罹患率が1970年代に比べ6倍近くも上昇しており、死亡率も上昇しています。乳がんのハイリスクグループ群ではエストロゲン(女性ホルモン)の影響が強く出ています。①初経が早い、②閉経が遅い、③妊娠、出産経験がない、④授乳経験がない、⑤閉経後、肥満傾向があり、運動不足を伴う、⑥母親や姉妹に乳がんになった人がいる、⑦アルコール過剰摂取、がハイリスクと言われています。

 乳がんの予防として、閉経後は肥満にならないように食事に注意し、タバコ、アルコールを控え、運動をすることが大切です。大豆製品を多く摂取することも有効です。しかし、そのような一次予防だけでは限界があるため、公的に行われている検診(マンモグラフィーなど)を積極的に受けてください。

◎前立腺がん
 高齢の男性に多くみられるがんで罹患数では男性の一位です。我が国での増加は生活習慣と関連していると言われていますが、明らかな危険因子は高齢と家族歴で、喫煙と肥満は危険度を増加させるようです。リスクを下げる要因として、運動、リコピン(トマトに多く含まれる)、イソフラボン(大豆に多く含まれる)の摂取があります。公的検診に採用されていませんが、60歳を過ぎたら定期的に血液でPSA検査を行うことを推奨します。

◎子宮頸がん
 子宮がんには子宮頸がんと子宮体がんがあり、子宮頸がんの原因のほとんどがパピローマウイルスであることが明らかにされています。子宮体がんは生活習慣由来のがんで、肥満との関りが指摘されています。子宮頸がんの発生年齢は他のがんと異なり30~40代にピークがあります。

 人に感染するパピローマウイルスは100種類以上が特定されており、30~40種類が性的接触によって感染すると言われています。これらのうち約15種類が発がん性を持ち、特に16型と18型の二つが約70%の子宮頸がんから検出されています。子宮頸がんのワクチンには16型と18型の感染を予防する2価ワクチン、それらに尖圭コンジローマ(イボ)の原因となる6型と11型の予防効果を加えた4価ワクチンがあり、公的接種の対象となっています。最近接種可能となった9 価ワクチンは、6/11/16/18/31/33/45/52/58 の 9つの型の感染を予防しますが、これらの型のうち 16/18/ 31/ 33/ 45/52/58 の 7つの型は、子宮頸がんのみならず、女性の腟がんや男女ともに外陰がん、肛門がん、中咽頭がんなどの原因となります 。

 HPVワクチンの接種が最も重要な予防法ですが、厚労省は20歳以上の女性に対して2年に一度の検診(子宮の入り口部分の粘膜細胞を採取する検診)を推奨しています。

◎肝細胞がん
 肝がんには肝臓から活性する肝細胞がんと胆管から発生する胆管細胞がんがあります。肝細胞がんの原因として最も重要なのは肝炎ウイルスの持続感染で、通常は慢性肝炎を経て線維化の進んだ肝硬変から発生します。B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)の検査を行い、陽性であれば医療機関の受診が必要です。アルコール性肝障害や肥満、糖尿病、脂質異常症などが原因の非アルコール性脂肪肝炎から肝硬変や肝細胞がんに進行することもありますので、注意が必要です。

◎胃がん
 胃がんの大半が生活習慣病ではなく、ピロリ菌で発症する感染症であることがわかってきました。若いうちにピロリ菌の検査を施行し、陽性者は直ちに除菌を行うことで胃がんの発生を抑制できます。大田区では新成人を対象に無料でピロリ菌検査を行いますが、通常は保険適応で検査や除菌を行う場合、胃の内視鏡検査を受ける必要があります。また、内視鏡検査で萎縮性胃炎がある場合は、除菌成功後も1~2年に1回は内視鏡検査を推奨します。

健康メモ(12)「脂質異常症と動脈硬化」

 脳出血の発症率は下がりましたが、代わって脳梗塞が増えています。
脳出血は高血圧が主な原因ですが、脳梗塞は背景に動脈硬化があって脳の血管がふさがり、血液が十分に流れなくなることで起こります。
肥満、高血糖、高血圧、そして脂質異常症が動脈硬化の原因になります。
 脂質異常症はコレステロール(悪玉LDL善玉HDL)と中性脂肪の異常値で診断します。

 コレステロールという物質は1種類しか存在せず、悪玉と善玉の2種類があるわけではありません。
コレステロールは水に溶けないので、そのままでは血液中を流れることができず、LDLやHDLと呼ばれるカプセルのような乗り物に乗って血液中を運ばれます。
LDLは、主に肝臓でつくられたコレステロールを全身に運ぶ「運送トラック」のような役割を、HDLは、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す「清掃トラック」の役割を果たしています。
どちらも大切な栄養素であるコレステロールを全身に行き渡らせるために重要な役割を担っているのです。
最近の研究から、動脈硬化を起こすのは悪玉LDLそのものではなく、悪玉LDLが酸化してできる酸化LDLだとわかりました。
中性脂肪には悪玉LDLを小粒にして酸化されやすくする働きがあります。

 コレステロールの70~80%は体内で合成されますので、大切なのはコレステロールを含む食品の摂取を制限することではなく、コレステロールの合成を促す食品を避けることです。
その代表が飽和脂肪酸(炭素間の二重結合がない)で、その逆に合成を促さないのが不飽和脂肪酸(炭素間の二重結合がある)です。
ただし飽和脂肪酸の摂取量が少なすぎると脳出血が起きやすくなるためバランスが必要です。
 不飽和脂肪酸で動脈硬化を防ぐものにEPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。
EPAとDHAは魚、とくにアジ、イワシ、サンマ、サバなどの青魚に豊富に含まれています。
EPAは中性脂肪の合成をおさえ、その分解を促します。
DHAは中性脂肪だけでなく悪玉LDLも減らします。

 不飽和脂肪酸の一種で、LDLコレステロールや中性脂肪が高い人が避けなくてはならないものにトランス脂肪酸があります。
多く含む食品の代表的なものとして、サラダ油、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、マヨネーズなどがあります。
また、それらを使用した食品(クッキーやスナック菓子など)にも多く含まれています。
 HDLコレステロールを上げるには有酸素運動が最も有効です。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を1日30分以上、あるいは1週間で2時間以上行うと効果的です。
筋力トレーニングも役立ちます。
運動する時間がない人や苦手な人は、普段の生活のなかで積極的に体を使う工夫をするとよいでしょう。

健康メモ(11)「肺炎球菌ワクチンを接種しましょう」

健康メモ11_主な死因の構成割合

 肺炎と誤嚥性肺炎で亡くなる人は、年間およそ12万2千人です。亡くなる人のほとんどが65歳以上の高齢者で、入院中や介護を受けている人に多く発症しますが、元気に過ごしている高齢者も安心はできません。体調の変化などのちょっとしたことがきっかけで肺炎を引き起こしやすくなり、急激に症状が進むこともあります。
 風邪をひく、インフルエンザにかかる、歳をとって体力が衰える、糖尿病、呼吸器や心臓に持病があるといったことが原因になってからだの免疫力が弱まると、細菌に感染しやすくなります。
 高齢者が肺炎を防ぐ方法として、「肺炎球菌ワクチン」の接種があります。

健康メモ11_肺炎球菌ワクチンの予防接種

 65歳以上でこれまで接種したことのない人は、定期接種(公費助成)で23価ワクチンを受けられます。受けられる年齢は、65歳、70歳、75歳というように5歳おきです。23価ワクチンの予防効果は約5年と考えられているので、65歳になったら早めに定期接種をすませ、その後も5年おきに接種するのが理想的です。また、60~64歳で基礎疾患がある方も定期接種を受けられます。
 13価ワクチンは、成人の場合は任意接種で自費で受けることになります。肺炎のリスクが高い高齢者などは、23価ワクチンに加えて13価ワクチンも接種すると予防効果がより高まると考えられています。

健康メモ(10)「漢方薬の使い方」

 新型コロナ後遺症患者の増加に伴い、漢方薬を使う機会は増えています。しかし、漢方薬は通常の薬剤と異なり、患者さんの「証(しょう)」・・・その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差・・・に基づいて処方する必要があります。
 証の分け方として有名なのが、「虚・実」です。

健康メモ(10)「漢方薬の使い方」

 例えば、風邪には葛根湯(かっこんとう)を処方しますが、これは比較的体力があり胃腸の丈夫な人に使うもので、おなかをこわしやすい虚証の人には用いません。

 また、急性上気道炎(風邪)に対して漢方では「病期」と「季節」で対応を変える必要があります。
病期は「表証」(発症72時間以内)、「半表半裏証」(発症48時間~)、「裏証」(発症48時間~)の3つが基本で、裏証では深部臓器の症状が出現し、消耗した人体の機能の回復を促進する効果が期待できる処方があります。季節による対応の違いですが、冬場の風邪・インフルエンザの表証では麻黄湯や葛根湯などを使うのに対し、夏場の風邪の表証では清上防風湯などを使います。

 新型コロナ後遺症の症状に対し処方される漢方薬には以下のようなものがあります。

【倦怠感】
◎補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
倦怠感や食欲不振、寝汗などの症状。体力があまりなくて疲れやすく、胃腸が弱い方に用いられます。

◎十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
倦怠感や疲れ、貧血、食欲不振、手足の冷えなどさまざまな症状。食欲がなく、体力低下や手足の冷えなどが気になる方に用いられます。

【不眠・不安】
◎加味帰脾湯(かみきひとう)
虚弱体質で心身が疲れ、血色が悪い人の、貧血、不眠症、精神不安などの改善に用いられます。寝汗、微熱、熱感などがある場合に向きます。

【咳・息切れ】
◎人参養栄湯(にんじんようえいとう)
体力が落ちている人の全身状態の改善に効果が期待でき、特に咳などの呼吸器症状にも使用されます。

健康メモ(9)「がんの予防について」・・・国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん予防」を参考にしています

 日本人のがんの中で、原因が生活習慣や感染であると思われる割合をまとめたものです。

健康メモ(6)「睡眠を上手にとる」

 Inoue M, et al. Burden of cancer attributable to modifiable factors in Japan in 2015. Glob Health Med. 2022; 4(1): 26–36.より作成

 「全体」の項目に示されている、男性のがんの43.4%、女性のがんの25.3%は、生活習慣や感染が原因でがんとなったと考えられています。
5つの生活習慣「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」と「感染」ががんの予防で大切です。

(1)禁煙

 たばこは肺がんをはじめ食道がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、膀胱がん、乳がんなど多くのがんに関連します。
たばこを吸う人は吸わない人に比べて、がんになるリスクが約1.5倍高まることもわかっています。受動喫煙でも肺がん(特に腺がん)や乳がんのリスクは高くなります。

(2)節酒

 多量の飲酒でがんのリスクが高くなります。
男性では特に食道がん、大腸がんと強い関連があり、女性でも、乳がんのリスクが高くなることが示されています。
飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり約23g程度(日本酒;1合、ビール大瓶;1本、焼酎;原液で1合の2/3、ワイン;ボトル1/3)までとし、飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。

(3)食生活

1)減塩する

 食塩摂取量の多い男性では胃がんのリスクが高くなります。
また、女性は男性ほどはっきりした関連はみられないものの、いくら、塩辛などの塩分濃度の高い食べ物をとる人は男女ともに胃がんのリスクが高いという結果も報告されています。
厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準」では、1日あたりの食塩摂取量を男性は8.0g未満、女性は7.0g未満にすることを推奨しています。

2)野菜と果物をとる

 野菜と果物の摂取が少ないとがんのリスクが高いことが示されていますが、野菜や果物を多くとればリスクが低下するかどうかという点は明らかではありません。
野菜と果物をとることは、脳卒中や心筋梗塞の予防にもつながるので、毎日意識的にとるようにしましょう。

3)熱い飲み物や食べ物は冷ましてから

 飲み物や食べ物を熱いままとると、食道がんと食道炎のリスクが高くなるという報告が数多くあります。
飲み物や食べ物が熱い場合は、少し冷まし、口の中や食道の粘膜を傷つけないようにしましょう。

(4)身体を動かす

1)活発な身体活動

 国立がん研究センターの研究報告によると、身体活動量が高い人ほど、何らかのがんになるリスクが低下していました。
特に、高齢者や、休日などにスポーツや運動をする機会が多い人では、よりはっきりとリスクの低下がみられました。
がんの部位別では、男性では、結腸がん、肝がん、膵がん、女性では胃がんにおいて、身体活動量が高い人ほど、リスクが低下しました。

2)推奨される身体活動量

 厚生労働省は、「健康づくりのための身体活動基準2013」の中で、18歳から64歳の人の身体活動について、“歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと”、それに加え、“息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度行うこと”を推奨しています。
65歳以上の高齢者については、“強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと”を推奨しています。

(5)適正体重を維持する

 これまでの研究から、男性の場合、肥満度の指標であるBMI値21.0~26.9でがんのリスクが低く、女性は21.0~24.9で死亡のリスクが低いことが示されました。

※BMI値=(体重kg)/(身長m)×(身長m)

(6)感染

 感染は、日本人のがんの原因の約20%を占めると推計されます。
感染の内容として、B型やC型の肝炎ウイルスによる肝がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)による胃がんなどがその大半を占めます。
肝炎ウイルスの検査を受けること、HPVワクチン接種、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌などが推奨されます。

健康メモ(8)「睡眠時無呼吸症候群は問診で疑います」

 睡眠時無呼吸症候群(閉塞型)は睡眠中に繰り返し上気道が狭窄または閉塞してしまい、呼吸をしようとしてもできないため頻回に低酸素血症が起こり、脳も体も休めなくなる病気です。深い睡眠が得られず、日中の眠気や不注意、疲労をきたし交通事故や労働災害のリスクの上昇、交感神経活性亢進による高血圧や不整脈、動脈硬化をきたし、心血管系イベントが発生しやすくなります。

 睡眠時無呼吸症候群の患者さんは自覚がないこと、また自覚があっても受診せずに放置していることも多いのが実態です。自覚症状として重要なのは、睡眠中の「窒息感」と「あえぎ呼吸」、起床時の頭痛、日中の過度の眠気、夜間頻尿、疲労・倦怠感などです。また家族歴も重要です。肥満が睡眠時無呼吸症候群(閉塞型)の最大の発症要因ですが、アジア人は下顎が後退傾向で小さいという解剖学的な特徴があり、肥満のない患者さんも多いようです。

 睡眠時無呼吸症候群を疑ったら、自宅で携帯装置による簡易モニター検査を行い、無呼吸低呼吸指数(AHI)を測定します。AHI40以上で眠気などの症状が強い場合はCPAPによる治療を開始できます。鼻CPAP療法で気道内に風を送って陽圧を維持し、上気道閉塞を防ぎます。

健康メモ(6)「睡眠を上手にとる」

健康メモ(7)「非結核性抗酸菌症とは」

 非結核性抗酸菌症(NTM)の患者さんは近年増加しており早急な対策が望まれています。わが国のNTMの約90%を肺MAC症(菌の種類です)が占めます。肺MAC症はやせ型で中高年の非喫煙女性に多く、慢性の咳や血痰、胸部X線の異常陰影で受診されます。結核とは異なり、ヒトからヒトへの感染はありません。水、土壌、塵芥などに常在する環境菌で、浴室の水や庭の土が感染源として注目されています。

治療開始が遅れると薬を長期間服用しても菌が陰性化せず、病変が進行して体重減少や呼吸困難を呈するようになります。

健康メモ(6)「睡眠を上手にとる」

上図は胸部CT写真ですが、両肺の赤丸で囲った部分に非結核性抗酸菌症による病変があります。肺の前の方(中葉や舌区と呼びます)に病変ができやすいのが特徴です。

 診断には喀痰培養検査が必要ですが、なかなか痰が出ない方もおり、起床して顔を洗うときに頑張って採取していただきます。

MAC症の治療は3種類の抗菌薬(リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシンもしくはアジスロマイシン)で行います。副作用発見のため最初の2か月は2週間に1回の頻度で採血を行います。肺MAC症の治療期間は菌陰性化後約1年とされていますが、治療中止後再燃する場合も多く、実際は2年程度の治療を行うことが多いです。気長にじっくりやっていく必要があります。

健康メモ(6)「睡眠を上手にとる」

健康メモ(6)「睡眠を上手にとる」

 図は典型的な一晩の睡眠段階を示します。8~10分で入眠し、約90分ノンレム睡眠が続き、最初のレム睡眠が現れます。ノンレム睡眠の深さにはステージ1~4があり、入眠時は段階を経て深くなり、覚醒時は段階を経て浅くなっていきます。最初の90分のノンレム睡眠でしっかり深く眠れることがとても重要です。

 睡眠がうまくとれないと、インスリンの分泌が悪くなって血糖値が高くなり、糖尿病を招きます。また、食べすぎを抑制するレプチンというホルモンが出ず、太ります。交感神経の緊張状態が続いて高血圧になります。精神的に不安定になりやすいとも言われています。

 不眠症のパターンには①入眠障害(寝つきが悪く、30分以上経っても眠れない)、②中途覚醒(途中で目が覚めて、なかなか寝付けない)、③早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)、④熟睡感欠如(ぐっすり眠った気がしない)があります。これらが組み合わさって起こることもあります。

 「体温」と「脳」に眠りスイッチがあります(西野精治「スタンフォード式最高の睡眠」)。覚醒時には深部体温が皮膚体温よりも2℃ほど高いのですが、入眠時は深部体温が下がり、皮膚体温が上がるためその差が縮まります。たとえば40℃のお風呂に15分入ったあとで測定すると、深部体温は0.5℃上がりますが、その後上がった分だけ大きく下がろうとします。寝る90分前に入浴を済ませておけば、その後さらに深部体温が下がっていき、皮膚温度との差も縮まり、スムーズに入眠できるのです。すぐ寝るときは深部体温が上がりすぎないように、ぬるい入浴かシャワーがよいようです。

 「脳」のスイッチを切るためには、寝る直前まで仕事をしたり、ゲームやスマホを使ったりせず、色々悩まず、何も考えないこと。ただそれは難しいこともあります。場合によっては適切な睡眠薬を服用することも必要です。睡眠薬を一度飲み始めると止められなくなる、睡眠薬を飲んでいると段々効かなくなってくる、これらは誤解です。

 どうかご相談ください。


健康メモ(5)「血圧を下げるには」

 「高血圧は万病のもと」と言われますが、高血圧だけで自覚症状は起きません。そのため高血圧は「サイレント・キラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれるのです。血液の圧力が高いと血管の壁が劣化して破れたり、詰まったりしやすくなります。脳や心臓の血管が詰まれば脳梗塞や心筋梗塞につながりますし、足がしびれて動かなくなったり、腎臓の機能が低下して人工透析が必要になったりすることもあります。

 健診やクリニックで測った血圧が、上が140以上、もしくは下が90以上であれば高血圧と診断されます。自宅で測定する場合は、上が135以上、もしくは下が85以上が基準です。

 では血圧を下げるにはどうしたらよいでしょうか。

(1)減塩
 塩分摂取量が多いと血液の量が増え、血管の壁にかかる血液の圧力が増えます。一食で塩を多く摂取する食品の第1位はカップ麺、第2位は袋麵です。第3位は梅干、次いで漬物ですが、食べる量が少ないので大きな問題にはなりません。実際にはパンで摂取する人が多く、6枚切りの食パンには約0.8グラム入っていて、味噌汁お椀半分~4分の3に相当します。ただし、近年塩の摂取によって血圧が上がるかどうかは遺伝子で決まり、同じ量の塩を摂取しても同じように血圧が上がるわけではないことがわかってきました。血圧を下げるために厳しい減塩が必要な人は半数以下であるようです。

(2)カリウム
 カリウムは野菜(小松菜、ホウレン草、春菊、カボチャなど)と海藻、大豆、キノコに多く、魚や果物にも含まれます。カリウムをしっかり摂取すると腎臓は余分なカリウムを排出するのですが、そのときにカリウムがナトリウムを引っ張って一緒に体から出て行くのです。高血圧の薬を飲んでいる人がカリウムの摂取量を増やすと、薬を飲まなくてもよくなることもあります。

(3)減量
 肥満傾向の人が減量すると血圧が下がることがわかっています。その理由として、脂肪で押された血管が広がり心臓の負担が減ること、食塩感受性が下がること、内臓脂肪が減少すること、が挙げられます。

(4)運動
 ややきつい有酸素運動を一日30分以上、週に180分以上行うと血圧を下げる効果が出てきます。運動に慣れていない人は一日40分、一週間に200~240分散歩してみてください。歩行のような有酸素運動で血管が広がるだけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加することもわかっています。

(5)節酒
 アルコールを飲むと尿が増えますがナトリウムは出て行かないため、血液に塩分が濃縮され、血圧が上がります。安全に飲めるのは日本酒に換算して男性は週に6合、女性は3合までとされています。

(6)禁煙
 朝起きた時の一服で血圧は30上がると言われています。タバコが血圧を上げる力はすさまじく、これは新型タバコでも同様です。タバコの煙に含まれる一酸化炭素、ニコチン、活性酸素が悪玉御三家と言われています。

(7)ストレス、睡眠
 ストレスで血圧が一時的に上がることは珍しくありません。月曜午前は魔の時間帯と言われており、心臓病で亡くなる方も多くなります。睡眠不足も高血圧を引き起こしやすく、睡眠時無呼吸症候群の人は約半数が高血圧です。

◎生活習慣の改善で血圧はこれだけ下がる(高血圧治療ガイドラインより)

 DASH食:穀物、野菜、果物、豆類、低脂肪乳製品といった食材をバランスよく食べる

 血圧の薬を使う目的は血管と内臓を守ることです。一度始めた薬を一生飲まなくてはならないということはありません。生活習慣の改善によって薬を減らしたり、中止したりできる可能性もあります。ですから一緒に相談しながら高血圧に取り組んでいきましょう。

健康メモ(4)「増加しているうつ病」

 世界各国でコロナ感染症の影響によりうつ病の方が増加しています。例えば日本では、2020年以前の有病率が7.9%であったものが2020年には17.3%に増加しています。うつ病のスクリーニングとして、次の質問票(PHQ-9)があります。

この2週間、次のような問題にどのくらい頻繁に悩まされていますか?】

1.物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない
2.気分が落ち込む、ゆううつになる、または絶望的は気持ちになる
3.寝つきが悪い、途中で目が覚める、または逆に眠りすぎる
4.疲れた感じがする、または気力がない
5.あまり食欲がない、または食べ過ぎる
6.自分はダメな人間だ、人生の敗北者だと気に病む、または自分自身あるいは家族に申し訳ないと感じる
7.新聞を読む、またはテレビをみることなどに集中することが難しい
8.他人が気づくくらいに動きや話し方が遅くなる、あるいはこれと反対に、そわそわしたり、落ちつかず、普段よりも動き回ることがある
9.死んだ方がましだ、あるいは自分を何らかの方法で傷つけようと思ったことがある

 各質問の頻度を、まったくない0点、数日1点、半分以上2点、ほとんど毎日3点と点数化し、その合計点を出します。そして10点以上の場合、うつ病の可能性が高いのです。

 うつ病治療の4本柱は、①心身休息、②環境調整、③心理療法、④薬物治療ですが、食生活や運動のような生活習慣の改善も重要視されています。不健康な食生活、喫煙、アルコールの乱用、体を動かすことの少ない生活はうつ病の危険因子であり、運動、食事指導、禁煙はうつ病の治療としてのエビデンスがあります。

 うつ病かもしれないと思った方は、まずかかりつけ医に受診していただくのがよいと思います。

健康メモ(3)「ワクチンの予防接種について」

 ワクチンの導入により多くの感染症の症例数は99%以上減少しました(ジフテリア、麻疹、ポリオ、風疹、天然痘など)。百日咳、破傷風、ムンプス(おたふくかぜ)も90%以上、A型肝炎、B型肝炎、水痘は80%以上減少しています。

 ワクチンは感染症の抗原を接種することで、将来の病原体へのばく露の際に十分な免疫反応を得られるように備えるものです。これはワクチンを接種した人の感染リスクを低下させるわけですが、多くの人が接種することでコミュニティにおける感染症の流行リスクを下げることになります(集団免疫とよびます)。

 ワクチンを接種することによる害(副反応)がないわけではありません。現在推奨されているワクチンはその害よりも利益の方がはるかに大きいものです。日本には「予防接種健康被害救済制度」があり、定期の予防接種によって健康被害を生じた場合は、医療費・障害年金等の補償の対象になります。

(1) 麻疹・ムンプス・風疹ワクチン(MMRワクチン)

 MRワクチン(麻疹・風疹)とムンプスワクチンを別々に接種します。非常に有効性に優れたワクチンです。日本では2011~2014年に風疹の患者が17,429人発生し、45件の先天性風疹症候群も報告されました。大田区では現在、19歳以上の妊娠を希望する女性とその同居者に対し、無料で抗体検査、ワクチン接種(抗体価が低い場合)を行っています(当院でも行っています)。なお、MMRワクチンの有効期間は終生と考えられています。

(2) 破傷風・ジフテリア・百日咳ワクチン

 日本では、生後3か月から18か月までにジフテリア・百日咳・破傷風の三種混合ワクチン(DPTワクチン)+ポリオワクチン(IPVワクチン)を4回接種し、11歳以降にジフテリア・破傷風の二種混合ワクチン(DTワクチン)を追加接種します。

(3) 水痘ワクチン

 2004年から定期接種が始まりました。1回目を12~15か月に行い、その半年~1年後に2回目の接種を行います。

(4) 帯状疱疹ワクチン

 水痘ワクチンが2016年に帯状疱疹ワクチンとして承認され、2020年に「シングリックス」が帯状疱疹ワクチンとして認可されました。水痘ワクチンが弱毒生ワクチンであるのに対し、「シングリックス」は不活化ワクチンで、発生抑制効果、神経痛抑制効果とも高いです。適用連例は50歳以上で、「シングリックス」は2か月の間隔で2回うちます。

(5) 肺炎球菌ワクチン

 2013年以降23価ワクチン(PPSV23)が定期予防接種(65歳以上)に追加されました。1回の接種で約5年間効果が持続するので、5年ごとに接種します。成人に使用できる肺炎球菌ワクチンは2種類あり、もう一つは13価ワクチン(PCV13)です。PPSV23は90種類の肺炎球菌のうち23種類を予防できますがその免疫効果はそれほど強くありません。一方PCV13が予防できるのは13種類ですが、より高い免疫効果を期待できます。PPSV23とPCV13を両方接種することで、強力な予防効果を期待できます。

(6) インフルエンザワクチン

 ワクチンの有効性は、その年のワクチンとその年に流行するウイルスの型がマッチするかどうかによって異なります。マッチすれば最大で50~60%の予防効果があると言われています。仮にマッチが悪くてもインフルエンザの発症、それによる入院または死亡を低下させる効果があると考えられています。ハイリスクな心血管系疾患を有する患者群においてリスクを有意に低下させることが報告されました。

(7) ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン)

 2価ワクチン(サーバリックス)と4価ワクチン(ガーダシル)が使用可能です。サーバリックスは子宮頸がんの70%、および肛門がんの80%の原因となるHPV16およびHPV18に対して予防効果があり、ガーダシルはHPV16およびHPV18に加えて尖圭コンジローマの90%の原因とされるHPV6およびHPV11に対しても予防効果があります。

(8) コロナワクチン

 2021年11月末以降、日本を含む世界各地において、新型コロナウイルスのB.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)の感染が報告されています。

オミクロン株に対する発症予防効果については、ワクチン3回目接種によりその2~4週間後には発症予防効果が60~75%程度に高まり、一時的に回復します。しかし、20週後以降はその効果がほぼ見られなくなるまで低下したというデータもあり、効果の持続期間については短い可能性があります。入院予防効果については、3回目接種から105日以降では、18~64歳で67.4~75.9%、65歳以上で85.3~86.8%という報告や、3回目接種後の発症予防効果や入院予防効果は、オミクロン株BA.1とBA.2に対して同様であったとの報告もあります。

オミクロン株流行期において、60歳以上の者に対するファイザー社ワクチン4回接種群は、3回接種群と比較して接種後30日間で、感染予防効果45%、発症予防効果55%、入院予防効果68%、重症化予防効果62%、死亡予防効果74%であったと報告されています。

健康メモ(2)「生活習慣病改善のための食事療法のポイントは?」

 高血圧や高コレステロール血症に対しお薬を処方することは簡単です。しかし、本当に患者さんのことを考える医師は、禁煙やワクチン接種と共に、食事と運動習慣のことを患者さんに説明し、努力を促します。健康的な食生活の基本は以下のように集約されます。

(1)  適切な量を食べる

 カロリー摂取量のコントロールです。コンビニでパンやお弁当を買うときは必ずカロリー表示をチェックしてください。肉や加工食品など高カロリーのものを野菜や豆などに代えることで、ボリュームを減らさずに摂取カロリーを減らすことができます。カロリー過剰を招く4つの摂取源は、食事、間食(デザートを含む)、非アルコール飲料、アルコール飲料です。間食や飲料によってカロリー過剰になっていることが多いのです。

 1か月に1㎏瘦せようと思ったら1200kcalずつ摂取カロリーを減らします。

(2)  健康的な食材を多く食べる

 健康的な食材とは、野菜、果物、食物繊維の多い雑穀類、ナッツや豆腐、不飽和脂肪酸を多く含んだ油(オリーブ油やキャノーラ油)です。タンパク源としては肉より魚が優れています。

 逆に不健康な食材は、加工肉(ハムやソーセージ)、赤い肉(牛肉や豚肉)、飽和脂肪酸を多く含んだ油(バターやラード、マヨネーズ)です。パスタやパン、白米などの炭水化物は吸収効率がよく、急激な血糖値の上昇を招くため、食べすぎに注意が必要です。

(3)  塩分は控えめに

 日本人は1日平均で10gの食塩を摂取しており、厚生労働省が推奨する男性8g、女性7gという基準をオーバーしています。過剰な食塩摂取は高血圧、脳梗塞のリスクを上昇させます。高齢の方の減塩対策はまず味噌汁です。味噌汁には12g程度の食塩が含まれているので、薄味にするか飲む量を減らすことを考えてください。

 ラーメンやそばの汁を飲まないようにし、梅干を含む漬物、干物や塩鮭といった味付けされた魚にも注意しましょう。

(4)  アルコールはほどほどに

 アルコールの過剰摂取は心疾患、脳梗塞、がん、肝障害のリスクを高めます。男性は140g、女性は120gを超えないようにした方がよいとされています。140gのアルコールとは、ビールであれば中瓶2本(1L)、日本酒であれば2合、焼酎であれば1合、ワインであればボトル半分くらいです。一方で、多少の飲酒は健康によいというデータもあります。ビールであれば350Lを1~2缶くらい、ワインであれば1~2杯くらいでしょうか。

 

健康メモ(1)「糖尿病の患者さんが増えているのは何故でしょうか?」

 2016年の調査で、糖尿病有病者は1000万人、可能性が否定できない予備軍も1000万人いることがわかりました。

 食事をして血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上がると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは全身の細胞に作用してブドウ糖を取り込ませるとともに、余分なブドウ糖をグリコーゲンという物質に変えて、筋肉や肝臓にたくわえます。

 インスリンの分泌が不足したり、インスリンの効き目が悪くなると、血糖値が上がり、ブドウ糖からエネルギーを作り出すこともできなくなります。これが糖尿病です。

 日本で糖尿病の患者さんが増えた原因は脂肪の摂取量が増えたことです。総カロリーの摂取量は減少しているのですが、脂肪の摂取比率が30%以上と高いのです。脂肪摂取量が増えると内臓脂肪と皮下脂肪が増えます。このうち特に内臓脂肪(肝臓、すい臓、腎臓などの内臓の周囲にたまります)からインスリンの効き目を悪くする悪玉物質が分泌されるため、糖尿病を発症するのです。腹囲(お臍の位置でのおなかまわり)は内臓脂肪の量の目安で、男性で85㎝、女性で90㎝が上限とされています。

 体重の多い方が減量することは糖尿病の予防、改善に結びつきます。減量の方法として、脂肪摂取を減らす低脂肪食と、ごはんやパンなどの炭水化物の摂取を減らす低炭水化物食を比較した研究では、低脂肪食の方が体内の脂肪をより減らすことが明らかにされています。

 日常生活で食事の時に血糖値の上がり方をおさえる方法として、ごはんなどの炭水化物をとる前に野菜サラダを食べることが推奨されています。野菜サラダを先に食べると、血糖値がゆっくり上がるだけでなく、ピークの値も下がるのです。野菜に限らず、タンパク質や脂肪、食物繊維も血糖値をあまり上げないので、おかずを先に食べることは理にかなっています。